年末が近づくと、なぜか気持ちが落ち着かなくなる。
その理由のひとつが「大掃除」ではないでしょうか。
やらなければいけないと分かっているのに、腰が重い。いざ始めても、思った以上に終わらず、疲労だけが残る。そして最後には「結局、今年も中途半端だった」と自分を責めてしまう。そんな経験をしている人は、決して少なくありません。
けれど断言します。
大掃除がうまくいかないのは、あなたの段取りが悪いからでも、やる気が足りないからでもありません。多くの場合、「大掃除に対する考え方」そのものが間違っているのです。
清掃の現場で長く仕事をしてきた立場から言えば、大掃除は根性論でやるものではありません。むしろ、力を抜いた人ほど上手くいきます。
まず大前提として覚えておいてほしいのは、「大掃除は一日で終わらせるものではない」ということです。年末の一日を丸ごと使って完璧を目指すと、体力も集中力も途中で尽きます。結果、雑になり、達成感も残りません。プロが現場でやるのは、必ず作業を分割することです。今日はキッチン、明日はリビングというように区切るだけで、心の負担は驚くほど軽くなります。
次に意識してほしいのが、掃除の「順番」です。多くの人は、目についた場所から手をつけがちですが、それが非効率の原因になります。基本は、上から下へ、奥から手前へ。この流れを守るだけで、無駄なやり直しが激減します。天井や照明のホコリを落としたあとで床掃除をする。これだけで、同じ作業時間でも仕上がりはまるで違います。
また、掃除を始める前に必ずやってほしいのが「片付け」です。床やテーブルに物が散らばった状態では、どれだけ頑張っても掃除は進みません。これは掃除が下手なのではなく、順番が逆なだけです。不要な物を一度まとめ、使う物を定位置に戻す。この下準備を済ませることで、掃除そのものが驚くほどスムーズになります。
洗剤についても誤解が多いポイントです。強い洗剤を使えば早く終わると思われがちですが、実際はその逆です。油汚れにはアルカリ性、水垢には酸性、軽い汚れには中性。この基本を押さえるだけで、ゴシゴシこする必要はほとんどなくなります。力ではなく、性質で落とす。これがプロの考え方です。
さらに大切なのが、「落とす」ことより「溜めない」ことに意識を向けることです。換気扇やシンクを完璧に仕上げることよりも、汚れが固まらない環境を作るほうが、はるかに価値があります。使ったあとにさっと拭く、汚れ防止シートを貼る。それだけで、来年の自分が驚くほど楽になります。
そして最後に、いちばん大事なことをお伝えします。
大掃除は、自分を評価するための行事ではありません。
多少ホコリが残ってもいい。全部終わらなくてもいい。去年より少し整っていれば、それで十分です。完璧を目指すほど苦しくなり、続かなくなります。大掃除とは、家をきれいにする行為であると同時に、自分の暮らしを見直す時間でもあります。
忙しい人でもできる!1日30分で終わる大掃除の進め方【プロが解説】
ほんの少し整った空間は、想像以上に心を軽くしてくれます。
「今年もよくやった」と、自分に言える大掃除をしてみてください。

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